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22-2121この1年(6)「ロケット爆発 」

発射台にとどまったまま爆発・炎上するロケット「ひなまつり」(3月29日、大樹町多目的航空公園周辺)

地方部 関根弘貴
堀江さんに見た「次への失敗」

 カウントダウンが「ゼロ」になっても、機体の下部で小さい炎がゆらめくだけ。上空に飛び立つ気配は全くない。カメラのファインダーから目を外すと、150メートル先の発射台で黒煙が立ち上り始め、炎が燃え盛ろうとしていた。「ま、まさか…」。ロケットは発射台にとどまったまま、爆発・炎上した。

 3月29日早朝。大樹町多目的航空公園周辺に特設された発射場に、全長4・1メートル、重量98・5キロの「ひなまつり」が姿を現した。元ライブドア社長の堀江貴文さんが創業者の「SNS」(東京)が開発した小型液体燃料ロケット。エンジンの推力を前回(昨年7月)の2・5倍に当たる500キロとし、到達高度7~10キロと音速超え(マッハ1以上)に挑んだ。しかし、結果は思うようなものにはならなかった。

地方部 関根弘貴

 発射台の上の機体を下から包み込むように広がっていく炎。「爆発するぞ!」「ここにいて大丈夫なのか?」「とにかく画(え)を押さえろ!」。現場の報道陣が騒然とする。

 爆発の瞬間は一度だけ。写真撮影で絶対に失敗は許されない状況だ。急いで構図を考え直し、爆発時に飛び散るであろう火の粉を捉えようと、シャッタースピードを速くするなどカメラの設定も変更。何度も試し撮りを繰り返した。無我夢中でシャッターを切った写真は、その日の1面に掲載された。

 「実験に失敗は付きもの。そこでの失敗は『失敗』ではない」。「宇宙のまち・大樹」を担当することになった2012年4月以降、前任者から引き継いだ考え方を忘れずに、航空宇宙関連の取材を進めている。今回の爆発も「次につながる失敗」だ。堀江さんら関係者も「今回のトラブルが大きな糧となる。くじけず再挑戦したい」と前向きだった。

 実際、この失敗は「成功の素(もと)」だった。8月には「ひなまつり」と同じ仕様のロケット「すずかぜ」でリベンジに挑み、過去最高高度(6・5キロ)だけでなく、音速超えも達成した。

 直後の記者会見で、堀江さんは推力2、3トンクラスの大型ロケットエンジンの開発と、地上燃焼試験を大樹で行う方針を発表。実験で足踏みしたときは慎重に歩を進め、流れに乗ったときは間髪入れずに次の一手を繰り出す、その緩急の自在さに感心した。

 来年は、SNSの子会社でロケット開発会社の「インターステラテクノロジズ」(牧野一憲代表)が大樹町で、サブオービタル飛行(宇宙に短時間滞在し地上に帰還すること)を目指して本格始動する。「夢は宇宙旅行」。そう断言する堀江さんの「次の一手」を、今後も冷静沈着な視点で追い掛けたい。このまちが将来、世界中から「SpaceTown TAIKI(スペースタウン・タイキ)」と呼ばれる日が来ることを信じて。(関根弘貴)

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