相手にとっての価値を考える~十勝の幸せな未来(3)
業績が悪化している企業に共通する課題の一つに、「自社のお客様が見えなくなっている」というものがあります。過去の成功体験に固執し、同じやり方を続けていても、世の中は常に変化しています。そのため、お客様が求める価値との間にズレが生じるのは当然です。個人でも、人間関係の悩みは尽きません。相手が悪い場合もありますが、その人を変えるのは難しいです。それぞれに事情があるからです。
企業においても、お客様は自分の都合で購入を決めます。「たくさん買ってください」と強制はできません。個人の生活も、企業の活動も、相手やお客様があって成り立つものであり、こちらの期待通りになるわけではないのです。では、どうすれば理想に近づき、悩みが減り、喜びが増えるのでしょうか?
その答えは、まず自分や自社が持っているものを見直し、現状に感謝することです。次のステップとして、他者やお客様に一方的に求めるのではなく、相手にとっての価値を考えてみましょう。個人の場合、普段接している家族や友人、同僚が何を望んでいるのかに気づかなければなりません。「この人はこんなことを大切にしているのか」「こういう事情があったから、あのように振る舞ったのだ」と少し歩み寄ってみます。すると気持ちが落ち着きます。
企業の場合も同様に、消費者や顧客がどんな困難や課題を抱えているのか、何を求めているのかを理解し、それに応える製品やサービスを提供する姿勢が欠かせません。人間関係でもビジネスでも、一方的に期待して求めるほど、思い通りにならない現実に直面します。「こうあるべきだ」「こうでないといけない」という執着は、「まだ足りない」という苦しみの原因です。欠乏感を手放し、相手にとっての価値を考えることが、より良い関係を築く鍵になります。
日々忙しさに追われると、空を見上げることすら忘れてしまいます。8月上旬、帯広空港に向かうバスに揺られながら、畑の奥に広がる十勝晴れの空に気づきました。この素晴らしい地域が守られ、発展してきたのは、過去から現在の十勝の人々が、周りの人やお客様が喜ぶ価値を見失わずに行動してきたからだと感じました。十勝清水駅前で商店を営んでいた祖母のお客様に向けた笑顔がふと心に浮かびました。
<本田光(ほんだ・ひかる)>
1980年清水町生まれ。清水小、芽室中、帯広柏葉高、広島大学大学院・社会科学研究科博士課程後期単位取得退学。ブランディングとマーケティングの方法論を軸に、さまざまな業種の企業の経営改善や組織改革、事業開発などに携わる。父親は絵本作家の本田哲也さん。
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