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牛サルモネラ症対策は健康なルーメンから

道総研畜産試験場 畜産研究部 家畜衛生グループ

1. 試験のねらい
 牛サルモネラ症で問題となっている持続排菌牛の原因の1つと考えられているルーメン発酵異常に着目して、給与飼料の構成や変更によるルーメン発酵状態の違いが、糞便中へのサルモネラ排菌に及ぼす影響を明らかにする。

2.試験の方法
1)乳牛から採取したルーメン内容液にサルモネラ(血清型5種類)を添加して、培養前後の菌数差によりサルモネラ増殖性の違いを明らかにした。
2)場内試験は3パターンのルーメン発酵状態を再現する試験区(適正区、濃厚飼料多給区、給与量不足区)でサルモネラの経口接種を実施し、ルーメン発酵状態の違いがサルモネラのルーメン内増殖性と糞便中排菌に及ぼす影響を明らかにした。
3)現地酪農場におけるサルモネラ持続排菌牛の特徴を調査した。

3.成果の概要
1)現地酪農場および場内試験牛32頭より採取したルーメン内容液pH は5.0-8.0の範囲であった。サルモネラ増殖性はpH 値上昇に伴って高くなる傾向があり、血清型による違いは見られなかった。
2)各試験区のルーメン発酵状態は、適正区は正常状態(pH6.0-7.0)、濃厚飼料多給区は潜在性ルーメンアシドーシス状態(pH5.8以下3時間以上/ 日)が再現されていた(図1)。給与量不足区ではpH7.0以上を維持する発酵異常状態は再現できなかった。
3)経口接種した菌量と接種後に検出された菌量がルーメン内では速やかに減少していることから、本試験で再現したルーメン発酵状態では、接種したサルモネラは増殖していないと考えられた。間欠的な検出は全試験区において認められた。経口接種後3時間のルーメン内菌数は給与量不足区が最も多く(図2)、その後の検出率も高い傾向が見られた(図3)。給与量不足状態ではサルモネラのルーメン内生残性が高いと考えられた。
4)経口接種後1日目の糞便中排菌数は濃厚飼料多給区が最も多く(図4)、その後の検出率も高い傾向が見られた(図5)ことから、ルーメン発酵状態は糞便中排菌にも影響すると考えられた。ルーメン発酵正常時より潜在性ルーメンアシドーシス状態の牛がサルモネラ保菌した場合には、糞便中排菌量が多くなる危険性が示されたことから、牛サルモネラ症発生農場では、飼料設計の見直し等によるルーメン発酵正常化が対策として有効である。
5)現地酪農場の持続排菌牛5頭のルーメン内容液からサルモネラは検出されず、糞便からは4頭で多量のサルモネラが検出された。このことから、持続排菌牛ではルーメンより腸管内で定着・増殖している可能性が大きいと考えられ、持続排菌牛となる要因解明のためにはルーメンだけではなく、腸管内動態等も踏まえた研究が今後も必要である。

4.留意点
本試験成果は、獣医師および畜産関係者が牛サルモネラ症発生農場で清浄化対策の1つとして、飼料設計等を見直す際の知見として活用される。



詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 畜産研究部 家畜衛生グループ 櫻井由絵
電話 0156-64-0615 FAX 0156-64-5349
E-mail sakurai-yosie@hro.or.jp

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