大樹航空宇宙基地構想

宇宙利用セミナー(札幌)

世界をリードする北海道の宇宙利用を目指して

 自民党の宇宙利用セミナー(札幌)が13日、札幌市内のニューオータニイン札幌で開かれました。同党の河村建夫宇宙・海洋開発特別委員長(元官房長官・文部科学大臣)が基調講演し、大樹町のロケット発射場を中心とした広域宇宙輸送センター構想を打ち出す考えを示しました。また、専門家3人が報告。このうちスペースアソシエイツの北村幸雄代表、北海道大学の高橋幸弘宇宙ミッションセンター長の要旨を紹介します。

第四次産業革命の宇宙利用は北海道から

自民党宇宙・海洋開発特別委員長 河村建夫氏

 日本も先進各国のように宇宙立国を目指しており、大樹町も同じ思いで取り組んでいる。具現化しなければならない。宇宙利用を拡大するなら鹿児島だけでは不十分。北海道農業での利用も期待が高まっている。
 宇宙に関心を持ったのは2002年、文部科学大臣就任後の初仕事となったH-2A6号機打ち上げ。当時から米シカゴの穀物市場では衛星を持って情報を集めており、農業の世界では宇宙利用が進んでいる。
 党の地方創生の責任者(地方創生実行統合本部長)を担っており、東京一極集中をどう分散するかが課題。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の情報機能を、地震の少ない山口県に移転する。北海道での次の射場も含め、危機管理、地方創生の観点から機能を分散するのは当然だ。
 今後10年で、予算で宇宙基地の事業規模、累計5兆円を確保しなければならない。宇宙政策と産業が地方活性化につながる。北海道が射場を持てば大きな地域振興になる。北海道への設置をやるかやらないか、セミナーを皮切りに、党として決断する契機にしたい。
 大樹町を上空からヘリコプターで見て、町の長年の取り組みに理解を深めた。大樹町を中心とした広域の宇宙輸送センターをつくり、北極海航路を活用すれば、北海道が物流のハブになり得る。北海道の広域宇宙輸送センター構想で、50年先の未来の拠点づくりを考えなければならない。

世界に開かれた宇宙輸送センターの構築に向けて

スペースアソシエイツ代表 北村幸雄氏

 日本は長期の重要な宇宙政策を考える時機。これまで技術開発が中心だったが、2008年に宇宙基本法が制定され(1)産業振興(2)安全保障(3)宇宙科学・技術開発-の3本柱に基づいた戦略が必要だ。
 今、日本は中国に完全に負け、インドにも負けつつある。国内企業も海外投資に目が向いている。国の基幹インフラ(射場系)戦略立て直しが喫緊の課題。これに手を付けなければ問題は解決しない。
 これからの宇宙産業の焦点は、第4次産業革命に向けた対応力強化だ。人工知能(AI)学習制御など、付加価値の高いビジネス展開の時代に突入する。
 しかし、宇宙も鉄道や道路と同様、インフラ整備なくして将来の開発・利用の展望は開けず、産業は起こせない。(射場から打ち上げる)ロケットや衛星小型化による低コスト化が進んでいる。射場の需要拡大で大量生産が生まれ、新規参入もしやすくなる。大切なのは「6次産業化」の発想。ロケット設計・製造からユーザー、販売まで、単なる打ち上げではなく全体で産業を興さなければ。
 日本は東、南に太平洋を擁し、衛星の軌道投入に最適な打ち上げができる地理的優位性がある。日本で複数の打ち上げ拠点をつくるのは、必須の課題だ。
 米ユタ州では30年以上も毎年「小型衛星産官学交流カンファレンス(会議)」を開催、研究者らの情報交換の場ができている。こうした定着型の「国際シンポジウム」を夏の北海道で開いてはどうか。農業や酪農など特色を生かした交流の場を提案したい。

超小型衛星がもたらす宇宙情報革命~農業利用を中心として

北海道大学宇宙ミッションセンター長 高橋幸弘氏

 今は「宇宙情報革命前夜」。北大と北海道が頑張れば世界に勝てることを証明したい。
 われわれが作る人工衛星は重さ50キロ、大きさ50センチ四方。費用も大型に比べ安価で済み、1、2年で製作できて最新技術を生かせる。大きな衛星と超小型衛星が補い合うことが大切だ。
 超小型衛星の打ち上げは2014年に200機を超え、1年に500機、1000機が打ち上げられる世界がすぐに来る。それに高精度なカメラを搭載した衛星を作ることで、日本は勝てる。そこに気付いているのはわれわれだけ。北大は18年間、東北大と一緒に取り組んできた。
 開発する超小型衛星は、良質な漁場の推定やイネの生育段階の判定、病害虫の検出や樹種の判別など、さまざまな応用が可能だ。農林水産業はもちろん、環境や汚染、防災や減災、復興など何にでも共用できる衛星を作っている。
 北大には国内随一の研究環境がある。農学校からの歴史、国内最大規模の宇宙データ集団、国内有数の水産学部演習船など、他の大型大学にない分野を超えた自由な環境がある。学内の12部局が協力、意見交換できている強みがある。
 「北海道をフィールドビジネスのシリコンバレーに」が合言葉だが、30年後を見据え、地面に根差した開発をやっていけば十分に戦える。ただ、時間はあまりなく、すぐに取り組む必要がある。
 キーワードは「共有」。地上計測やデータ蓄積、打ち上げ施設充実を両輪でやれば、十分勝算がある。北海道から世界に向け発信したい。

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