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とかち鹿追ジオパーク 「火山と凍れ(しばれ)が育む命の物語」

然別湖エリアを中心に豊富な資源を誇る鹿追町の「とかち鹿追ジオパーク」は2013年12月に国内33番目、道内5番目の日本ジオパークとして認定された。

 地学的にも特徴的な素晴らしい自然の特性を持つことから、これを保全しつつ、伝える場として利用するひとつの方法として、地球活動を体感できる大地の公園『ジオパーク』がある。

 鹿追ジオパークの特徴は、然別の火山活動がつくった然別湖と周辺の独特の生態系。「火山と凍れ(しばれ)が育む命の物語」がとかち鹿追ジオパークのテーマだ。然別火山群は約1万~4万年前の噴火活動によって誕生した。東西のヌプカウシヌプリをはじめとする火山は、富士山のように同じ火口から噴火して溶岩が流れたのではなく、お餅が膨れるようにしてできた溶岩ドームで、川が流れていた谷がせき止められて誕生したのが然別湖とされている。

風穴の森に住む「エゾナキウサギ」

山腹には溶岩ドームが崩壊したガレ場がある。岩の隙間は空気の流れる通路になっており、冬場に冷たい空気が入り込んで冷やされる。春に雪が解けても、地面は氷点下のままなので染みこんだ水は再び凍る。こうして夏でも冷たい風を吹き出す不思議な「風穴」ができた。地面の中には一年中凍ったままの「永久凍土」もある。

 大地の営みは独特の生態系もつくった。湖に取り残されたオショロコマが、川から海へ出られなくなったことで、独自の進化を遂げたのが、然別湖だけに住むミヤベイワナ。エゾナキウサギが標高の低いガレ場に住んでいるのも、風穴の冷たい風による凝結がもたらす湿気で、岩場にエサとなる高山植物やコケが生えるからだ。

 こうした生態系ができた経緯や、火砕流が火山の恵みをもたらした大地で営まれる農業、貴重な自然を守りながら観光に活用する取り組みなどが、鹿追の“ジオストーリー”になる。

大雪山国立公園「然別湖」、「東雲湖」、「駒止湖」

然別湖は、大雪山国立公園の南東部、東大雪地域に位置する自然湖。湖周辺は白雲山、天望山(くちびる山)などの山々に囲まれ、今なお残る手付かずの森が湖の波打ち際まで広がっている。また、周辺には広大な風穴地帯に覆われ、エゾナキウサギや高山植物などの動植物が特異的に分布している。とりわけ周辺にある小さな湖「東雲湖」や「駒止湖」に続く歩道、東ヌプカウシヌプリの登山道にゴレツミズゴケなど希少なコケ類が群落を形成し、美しい景観を有している。

 東雲湖は然別湖から徒歩で1時間半ほどの距離に位置する、北海道三大秘湖の一つで日本の秘境100選にも選ばれている湖。周辺には6種類のミズゴケ類が確認されており、2014年8月には日本蘚苔(せんたい)類学会が定める「日本の貴重なコケの森」に道内で初めて認定された。

 駒止湖はアイヌ語「オッチシトウ」(女のすすり泣きが聞こえるような沼)の意味。周囲にはエゾナキウサギが生息することで知られている。

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大雪山国立公園 然別湖

北海道十勝管内の鹿追町から北海道道85号鹿追糠平線を北へ。大雪山国立公園内にある。