十勝毎日新聞 電子版

Tokachi Mainichi News Web

篠山紀信展 写真力

ジョン・レノン オノ・ヨーコ 1980年

ジョン・レノン オノ・ヨーコ 1980年

永遠の口づけから始まったひとつの物語が、幕を閉じました。

期間中、25,870人の方々が会場に足をお運びくださいました。112点のポートレートと出会った感想はいかがでしたか?
久し振りに出会えた懐かしさ、あらためて感じた美しさ、力強い生命力。
それぞれの作品にご自身が生きてきた時代を思い重ねた方も多かったことでしょう。
あの頃のご自分に会うことはできましたか?
写真力-。その途方もないエネルギーを感じていただけた62日間だったと思います。
多くのご来場に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 代表作約100点を、亡くなった著名人の写真を集めた「GOD」、スターたちの輝く瞬間を捉えた「STAR」、歌舞伎など異次元の世界を撮影した「SPECTACLE」、ヌードや肉体美を表現した「BODY」、東日本大震災の被災者の姿「ACCIDENTS」の5つのセクションで紹介します。各時代を象徴する人々のイメージを通して、日本が歩んできた時代を、日本人の自信、すごさを共有したい、という篠山のメッセージを体感できる貴重な展覧会です。

EVENT

終了致しました。

管内写真家に聞く「私の1枚」

 幅広い世代の目を引きつけてやまない、篠山氏の写真の魅力とは何か。管内の写真家や写真愛好家に語っていただきました。

Vol.5山下僚さん

宙に舞うげたの非日常性

 宙に舞うげた。テレビや映画から飛び出したようなひとコマ、「座頭市」シリーズの「カツシン」こと勝新太郎だ。
 東京都庁舎の規則正しい近代建築のシンボリックな部分と、巨大でたたずむ重圧感は、再起を願う波乱多きヒーローの内面を象徴しているようだ。曲線美の和傘が妙に意識され、あっぱれ感と、堂々とした姿に安ど感さえ覚える。
 撮影地の新宿は宿場町として栄えた。甲州街道や東海道五十三次(京都から江戸)にこんな渡世人がいたような錯覚にタイムスリップするのと、「現代版の東海道中」を連想する見方も楽しい。
 カメラマンとして過去30年、十勝毎日新聞社で報道写真に接した私は、やはり瞬間的に記録された「舞うげた」に魅了され、日常の中の「非日常性」を記録表現する写真を意識した。

勝新太郎(1992年)

Vol.4大井雪絵さん

見るたび発見

 「シノラマ」の技法を使った巨大な写真で、インパクトがある。3台のカメラを並べ、シャッタースピードを遅くして撮影したと聞き、発想がすごいと思った。一人ひとりの目から気持ちや表情が伝わり、迫力がある。東日本大震災の被災者の写真も、何とも言えない表情だった。
 私は風景を中心に撮影している。かっこいい鉄塔を見つけ、夕焼けなどと合わせて撮るのが好きだ。最近は人物も撮りたいと考えていた。篠山氏の写真を見て、自分も表情でその人の心を表現できるような写真を撮りたいと強く思った。
 開幕日に帯広美術館でテープカットに参加することができた。篠山氏を間近で見たが、話が面白く魅力的だった。見るたびに新しい発見がありそうで、展覧会は何度も足を運びたい。そして、「大相撲」の写真で1人だけいるという目をつぶった人を見つけたい。

大相撲(1995年)

Vol.3辻博希さん

完璧な美しさと時代性

 この作品は隙がなく、完璧な美しさ。被写体が持っているオーラや人間性が、写真からにじみ出てくるようだ。写真を見て、ここまで感動したことはない。
 写真家、女優、メークや衣装など一流のスタッフが集まって作品を作ると、ここまでのものができるのか。美しさだけではなく、どの写真にも時代性が込められている。その人の一番良い瞬間を写し撮っている。
 現場の空気のつくり方など、篠山氏にカリスマ性があるのだろう。篠山氏と女優の魅力がぶつかり、超越した写真ができるのでは。どうすればこのような表情を引き出せるのか、想像してしまう。
 篠山氏は異次元の仕事をしている。自分の写真を突き詰めなければならないと感じた。2014年に札幌で開かれた巡回展でも鑑賞したが、写真集を見るのと、展覧会で巨大な写真を見るのとは迫力が違う。見るたびに発見がある。何度も足を運びたい。

大原麗子(1988年)

Vol.2西島啓喜さん

被写体の尊厳を表す

 写真は「光と影の芸術」と受け止めている。篠山紀信氏の作品は美しく完璧だ。技術はもちろん、最高度に研ぎ澄ました感覚でシャッターを押していることが伝わる。私自身、篠山氏が「激写」で用いたレンズを使いこなせず、プロとアマの違いを思い知らされたこともあった。
 芸術家やタレントなど被写体のステータスを尊重し、さらに輝かせて提示している。被写体の尊厳を最大限に表現しており、圧倒的な支持を受けている理由が分かる気がする。
 篠山氏と言えば人物写真と思い込んでいたが、東日本大震災被災地の写真を撮影していることを最近、知った。この作品はよく計算されている。背景をある程度ぼかすことで、震災の生々しさに目が行き過ぎないようにし、子どもたちの表情をきちんと訴えている。表情からは前を向く姿が見え、未来を託そうとする印象を受ける。

大友瑠斗(9)大友乃愛(7)名取市(2011年)

Vol.1戸張良彦さん

"全身アンテナ"で第一線

 写真を撮るにあたり、大切にしなければならないのは記録性だ。どんなに構図が良くても、撮影した時代の空気や匂いの感じられない写真は、きれいなだけで終わる。
 数年もすれば忘れ去られてしまうだろう。その点で篠山紀信氏は現在に至るまで、人、もの問わず、一貫して「今を切り取る」ような写真を撮り続けているといえる。
 篠山氏の写真に衝撃を受けたのは自分が学生だった1975年。すでに同氏が発表していた「The BIRTH」「Death Valley」「Twins」のモノクロ写真。さらに同年に出版した写真集「晴れた日」では膨大な数のカラー写真に困惑もした。
 大学に入る前の自分にとって、篠山氏と言えば、その当時のタレントを撮影している人という認識だった。だがこれらの写真集を通じて、非常にアーティスティックで硬派な写真も撮影していることを知り、見る目が変わった。
 タレントと言えば、黒柳徹子のセミヌード写真も衝撃的だった。それまで脱ぐイメージのなかった黒柳さんが撮影を許可したのも、篠山氏だからできたことだろう。
 特筆すべきは篠山氏がデビューから現在に至るまで、浮き沈みなく第一線で撮り続けており、また必ずその時代の「時の人」を撮影していることだろう。全身アンテナと言うべき感度の高さを持っているからこそ、今もなお活躍し続けられるのだと思う。
 根幹、本質に迫る写真を数多く残し続けている同氏は写真家であり、ジャーナリストとも言える。
 かつてカメラのテレビコマーシャルに出演した同氏の「ハッと感じたら、グッと寄って、バシバシ撮る」という言葉にその全てが詰まっている。

黒柳徹子(1968年)

「写真力」って何?

会場風景:東京オペラシティ アートギャラリー(2012年)

「写真力」?
写真の力が漲(みなぎ)った写真ね。
写された方も、撮った者も、それを見る人々も、唖然(あぜん)とするような尊い写真。
特に、人の顔の写真ってすごいよね。いろいろなことを思い起こすし、あの頃、あの子と付き合ってたとか、でもグラビアの子に随分お世話になったとか(笑)、あの時代貧乏だったけど今より幸せだったかも…とか。
時空や虚実を超えて、脳裏に強くインプットするイメージの力が、写真力ってわけだ。
そんな写真ってどうやったら撮れるかって?
そりゃ大変なんだよ。めったにそんな写真は写らない。だって人知を超えた写真の神様が降りて来なくちゃ、すごい瞬間は立ち現れないんだもの。
その為にはあらゆる努力をする。被写体へのリスペクト、その場の空気を正しく読み、自分の感性を最大限にヒートアップさせる。すると本当に偶(たま)に神様が降臨する。そりゃ、すごいぞ。そこで撮れた一枚は、その人への想いはもちろん、時代や自分史をも思い起こさせる力になってしまうんだから。
で、この展覧会は、50年間にわたって撮ってきた写真の中から、飛び切り写真力のある写真ばかりをえらんでみたものなんだ。
よりすぐりの顔、顔、顔…
写真ってスゴイぜ!

篠山紀信

PROFILE

篠山紀信 プロフィール
1940年生、75歳。東京都新宿区出身
1963年 日本大学芸術学部写真学科卒業
1966年 『カメラ毎日』連載作品で日本写真批評家協会新人賞受賞
1970年 三島由紀夫氏の要請で、「男の死」をテーマに三島を撮影
1972年 坂東玉三郎を写した『女形・玉三郎展』で芸術選奨文部大臣新人賞受賞
1975年 雑誌『GORO』に「激写」シリーズの連載開始
1976年 ヴェネチア・ビエンナーレに参加、日本館にて個展を開催
1979年 『135人の女ともだち』で毎日芸術賞受賞
1991年 『water fruit』(樋口可南子)、『Santa Fe』(宮沢りえ)などが社会現象化
1998年 『少女たちのオキナワ』が国際写真フェスティバル金賞受賞
2007年 『五代目 坂東玉三郎』展開催
2009年 パリで『TOKYO NUDE』展開催
2012年 読売新聞社主催による『篠山紀信展 写真力』開催
※1998年から中央公論新社『婦人公論』の表紙撮影を担当している

INFORMATION

会期 2016年4月16日(土)〜6月26日(日)
会場 北海道立帯広美術館
帯広市緑ヶ丘2番地 緑ヶ丘公園
開館時間 午前9時30分〜午後5時(展示室への入場は午後4時30分まで)
休館日 月曜日
観覧料 一般1,000(900)円、高大生550(450)円、中学生以下無料

※( )は10名以上の団体、リピーター割引料金。※リピーター割引料金は、帯広美術館または他の道立美術館で開催された特別展の半券のご提示により、特別展のチケット1枚が割引になります(有効期限:チケット裏に印字)。※高校の教育活動としての観覧、障害者手帳をお持ちの方などは無料。

十勝毎日新聞電子版HOME