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動物園のあるまちプロジェクト

Vol.4

日本全国には91の動物園(日本動物園水族館協会登録)があり、
各園が特色ある展示や取り組みを行っている。
全国のまちの動物園を巡り、魅力を紹介する。

「群れ、混合飼育で自然に触れる」
宮崎市フェニックス自然動物園

 遠くから目を引くピンク色の集団は約70羽のフラミンゴ。ぞろぞろと登場して優雅に池の周りを歩き、グループに分かれたり、池に差し掛かるとばたばたと勢いよく飛んだり。調教された集団演技のようだが、実は赤の衣装を着た飼育係2人の動きに誘導されているだけで、訓練は一切ない。

 宮崎県内唯一の動物園「宮崎市フェニックス自然動物園」では、動物の「群れ」の習性を生かした取り組みを行っている。そのひとつが国内では珍しい、飛ぶフラミンゴを見ることができる「フライングフラミンゴショー」だ。展示場とは別の特設会場で、1日に3回行われる。

 統率が取れているのは集団で移動し、先頭に付いていくフラミンゴの習性から。飛ばない個体もいるが「フラミンゴの気分に任せている。強制はしない」と出口智久園長は話す。

 ショーは開園当初から行い、5年前から「飛ぶ」要素を加えた。フラミンゴは「飛べない鳥」と誤解されることも多く、「本来の姿を伝えたい」との飼育員の思いからだ。特設会場や展示場を屋根で囲い、逃げないよう羽を切っていた飼育方法を変えた。

 ショーで流れる音楽や先導する飼育係の衣装など従来の特色はそのまま変えず、「高齢の来園者からは『懐かしいね』といわれる」(出口園長)という長年の利用者への配慮も。一仕事終えたフラミンゴは少し離れた「フラミンゴ村」に戻り、国内最大という約300羽の群れの中で自由に羽を休める。




 同園は開園当初から、動物を自然に近い状態で展示する。集団で飼う「群れ飼育」だけでなく、国内の動物園に先駆けて、種が異なる動物を同じ空間で展示する「混合飼育」にも力を入れてきた。

 1971年に市民の動物園設置を求める声を受けて開園した。元上野動物園園長の古賀忠道さんの助言を受け、古賀さん自身が上野動物園では実現できなかった「動物を自然に近い形で見てもらいたい」という思いが込められている。

 雄大な自然で生活する動物の姿を、動物園で再現しようと開園当初から導入した手法「混合飼育」は、それまで動物園ではあり得ない試みだった。アフリカの現地調査に赴き、ガゼルやヌーなど約100頭を購入。弱い動物のための逃げ場所や安全地帯、エサ場や給水場所を複数作るなど工夫し、相性を見極めながら徐々に混合飼育を進めた。

 園内の「アフリカ園」にはシマウマ、ダチョウ、キリンが一緒に暮らす。全てアフリカに生息する動物で、その光景はまさに小さなサバンナ。出口園長は「自然環境が失われつつある中、混合や群れでの展示はより自然に近い状態で動物を見てもらえる」と力を込める。




 新たな群れ飼育の構想も進んでいる。同園は国内2番目に多い11頭のチンパンジーを飼育しているが、来年度、新たに取得した1.4ヘクタールの土地にチンパンジー舎を建設する。環境に飽きないよう3グループに分け、毎日展示場を変えながら生活させる計画だ。

 群れ・混合飼育を通じて動物の特性を引き出し、生き生きと生活させる。そして新たな命の誕生にもつなげていく。出口園長は「動物園は楽しみながら、自然を知る窓口」と強調する。それぞれの命のすばらしさを自然に近い状態で表現するために知恵を絞り、独自色のある「行きたくなる」動物園作りを進めている。

〈長編動画〉自然環境の再現へ 宮崎市フェニックス自然動物園

宮崎市フェニックス自然動物園

 「フェニックス・シーガイア・リゾート」のリゾート施設群に隣接し、松の丘陵地という自然豊かなところに位置しています。飼育動物は約100種1200点。温暖な地ならではの木々や草花も見ることができ、動物たちはもちろん、景色も楽しめます。「ゾウの散歩」や「ヤギの大行進」も日々実施。間近に動物の魅力を感じられる地域密着型の動物園です。

住所宮崎市大字塩路浜山3083-42
電話番号TEL 0985-39-1306
開園時間9:00~17:00
休園日毎週水曜日、12/31
入園者数324,422人(平成28年度)
公式サイトhttp://www.miyazaki-city-zoo.jp/

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