帯広農業高校(佐藤裕二校長)は、学校がある稲田町の地名にちなみ、水田稲作を復活させようと昨年、校内プロジェクトを立ち上げて活動している。畳約20枚分(32平方メートル)の広さだが、今年初めて水田でコメの収穫に成功し、生徒らが自信を深めている。
農業土木工学科の高山裕司教諭(46)が、かんがい排水を学ぶ一環として立ち上げた。隣接する帯広畜産大学構内に酒蔵「碧雲(へきうん)蔵」ができ、米作りへの関心が高まっていることも理由に挙げる。
高山教諭によると、諸説あるものの、稲田地区は郷土史資料などで1919(大正8)年から水田栽培が始まり、稲を作っていたことが地名の由来との説があるという。
2、3学年の希望生徒と一緒に、昨年はホクレンから配布された「バケツ稲」で栽培法を確認し、校内の旧定時制圃場(ほじょう)だった場所で「いなだ」作りにも着手。使用する校内地下水の水源調査や掘削などを行い、今年5月に重機などで温水池やビオトープなどを作り、約32平方メートルの水田を造成。食用米「きらら397」の苗を移植した。
碧雲蔵で麹づくり
9月30日に収穫作業が行われ、生徒9人が鎌で刈り取り、乾燥させるため「はさがけ」した。活動を知った碧雲蔵杜氏(とうじ)の若山健一郎さんらも見守った。伊藤維恩さん(2年)は「机上でのかんがい排水の仕組みや必要性を実践で学べた」と笑顔。高山教諭は「初の試みで作業も手探り。結果、農薬を使わない自然栽培となったが、予想以上の実入りだった。来年以降も挑戦を続けたい」と話した。
碧雲蔵では稲田米の一部を麹(こうじ)にして高校側に活用してもらう考え。若山さんは「稲田地区での水田復活は貴重。将来的に(酒造りなどで)連携できれば」と期待していた。(佐藤いづみ)