宮坂建設工業(帯広市、宮坂寿文社長)は28日、アスファルト・コンクリートプラント製造国内大手の日工(兵庫県明石市)と共同で、国内初の「水素専焼ジェットヒーター」の実証実験を行ったと発表した。冬季の工事現場で防寒やコンクリート養生に使う灯油ジェットヒーターの代替となる機器で、二酸化炭素の排出がなく、建設現場の脱炭素化につなげる狙いがある。2024年度に試作機の製品化、25年度以降の全国販売を目指している。(吉原慧)
現場の脱炭素化に加え、エネルギーの地産地消にもつなげようと、鹿追町に製造拠点がある水素を選んだ。水素を燃料としたアスファルトプラントの製造技術を持つ日工が、その技術を活用して開発した。
開発したヒーターは高さ約1メートル、長さ約1・4メートル、幅約0・65メートル、重さ約150キロ。同程度の能力の灯油ジェットヒーターに比べると一回り大きく重い。本体に、制御装置や複数の水素ボンベを組み合わせたカードルなどの機材をつなげて稼働させる。
実験は6~9日に、陸別町と幕別町で実施。コンクリート養生の現場をイメージした囲いを作り、灯油と水素の二つのジェットヒーターを比較した。24時間連続で稼働させ、20~70度の間の一定の温度に保てることを確認。また、水素ヒーターの排出ガスには水蒸気が多く含まれ、養生に適した高い湿度を実現しやすいという。一方で、水素は価格が「灯油の40倍」(宮坂建設工業)と高く、24時間の稼働で20万円ほどの燃料代になった。
24年度は日工が小型化などの改良を加えたものを、建設機材リースのカナモト(札幌)に販売し、宮坂建設工業の現場で再度実験する。全国販売は25年度を予定し、価格は灯油ヒーターの3倍程度を目指す。宮坂建設工業の戸松義博副社長は「水素は高いが、使用量が増えれば他の燃料価格に近づくはず。利用拡大のきっかけとしたい」と話した。