【大樹】大樹町の宇宙開発スタートアップ企業インターステラテクノロジズ(IST、稲川貴大社長)は4月27日、同町芽武の本社工場で、小型人工衛星搭載用ロケットZERO(ゼロ、2023年度中の打ち上げ予定)のエンジンに使用しているターボポンプの水流し試験を報道陣に公開した。
ゼロは宇宙ビジネスの本格展開に向けて開発中の新型ロケット。先端部にペイロード(貨物)を載せて打ち上げる。貨物は主に小型、超小型サイズの人工衛星を予定している。
ターボポンプは燃料をタンクから燃焼器に送るロケットの「心臓部」。他のロケットでは多くのトラブルが報告されており、技術的な難易度は高い。このため室蘭工業大(室蘭市)、ポンプメーカー大手の荏原製作所(東京)と共同で開発研究を進めている。
公開試験にはIST研究開発企画統括の金井竜一朗さん(推進エンジニア)、室工大航空宇宙機システム研究センターの内海政春センター長(教授)、荏原製作所航空宇宙技術グループの向江洋人さんが参加。燃料(液体酸素)に見立てた水をポンプ内に流し、インペラ(羽根車)の稼働状況などを確認した。
試験は成功し、内海教授は「いよいよロケットの“心臓”が動き出した。研究を加速させたい」と強調。向江さんは「ゼロは重要なステップを迎えた。当社の技術力を生かし開発に貢献したい」と述べた。
稲川社長は公開試験に先立ち、ISTの事業について現状を報告。「(大推力を得られる)ターボポンプはコストパフォーマンスや将来的な発展性を考えて選択した。ゼロの次に控える大型ロケットにも使用できる技術を早急に手に入れたい」と述べた。
ゼロの打ち上げに合わせ、大樹町は今年度、新しいロケット発射場「LC-1」の工事に着手する。(能勢雄太郎)