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視覚障害者の自立に寄与 理解に課題も 盲導犬

盲導犬「エル号」との外出を楽しむ三浦さん

 目の不自由な人の日常生活や社会参加を補助する「盲導犬」。道内の盲導犬ユーザーは52人(昨年3月末時点)で十勝管内は3人だが、道盲導犬協会(札幌)の試算では、潜在的に利用を望む人の数は道内で4倍の約200人とされている。飲食店で入店を断られるなど社会の理解にも課題が残る。今年は「戌(いぬ)年」。同協会は「必要な人に盲導犬が行き渡り、社会参加を果たせることが理想」と共生社会の実現を望んでいる。

 視覚障害者の多くは、独力での外出が難しくなると無力感でふさぎがちになることが多いという。同協会の和田孝文所長は「盲導犬を持つという選択は、単に利用者の移動を支えるだけでなく、介助者に頼らない行動の幅を広げる。社会の中で役割を持つこと、自立することにもつながる」と話す。

 十勝で2003年に利用を始めた三浦幸恵さん(58)=池田町。20代後半で失明後、介助者への遠慮などから外出が減ったが、盲導犬と出掛ける今は「自分の自由意思で行動できるのが幸せ」と語る。

 盲導犬が目の不自由な人の生活の質の向上に寄与する一方で、社会の受け入れ状況など課題も残る。「身体障害者補助犬法」(02年施行)、「障害者差別解消法」(16年同)により、公的・民間施設には盲導犬を含む補助犬の受け入れや、合理的な配慮の義務が明記されたが、同伴を拒否する施設は依然としてあるのが現状だ。

 利用者の研修や啓発活動を行う道盲導犬ユーザーの会で副会長を務める三浦さんは、自身も盲導犬の「エル号」と生活する中、かつて飲食店の入店拒否や公共交通機関の乗車拒否に遭った経験から、盲導犬に理解を求めるパンフレットを作成した。

 盲導犬の同伴可を掲げながらも拒否する背景としては、現場レベルの理解不足以外にも、飲食店が気にする衛生面や、犬アレルギーを持つ人が同一空間で過ごすことへの施設管理者側の不安が挙げられる。同協会は「店の売り上げや人の健康に関わることなので、受け入れに慎重になる気持ちはよく分かる」と理解を示すが、把握する限りでは今日まで、盲導犬によるアレルギー発症などは報告されていないという。

 和田所長は利用者側の義務として周囲への配慮が必要とした上で、「最終的には健常者と障害者双方の歩み寄りが必要」と強調。三浦さんも「トラブルにならないよう、権利を主張するのではなく、理解してもらおうとする姿勢が大事」と共生の大切さを話している。(石川友史)

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  • 盲導犬の役割について話す和田所長

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  • 盲導犬の利用と課題について話す和田所長 PR犬のツナ号と

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