ばんえいで興奮作用の禁止薬物 １頭を出走停止 帯広署に届け出
公正保持のため、検査結果が判明するまで岡田厩舎の管理馬はすべて競走除外となった
帯広市は２４日午後、ばんえい競馬（市主催）で１６日に出走した馬から禁止薬物の「テオフィリン」が確認され、この馬を失格と３０日の出走停止処分（１７日から）にしたと発表した。競馬法違反の恐れがあるとして同日、帯広署に届け出た。昨年度の馬券発売額が市単独開催後の最高額を記録するなど、盛り上がりを見せる中での再びの不祥事に、関係者は落胆し、原因究明と再発防止を求めている。
市によると、馬は岡田定一厩舎（きゅうしゃ）所属のメモリアルサマーで、１６日の第７競争で２着に入った。２着以内の馬を対象に行う競走馬理化学研究所の検査で、２３日にＡ検体の陽性、２４日にＢ検体の陽性が報告された。２４日も第８競争に出走予定だったが、競争除外とした。
テオフィリンは気管支拡張や心筋興奮の作用がある薬物。気管支炎の治療などで処方されるが、この馬に治療歴はないという。緑茶などにも成分として含まれるが、今回の検査でカフェインの検出はなかった。
市は原因究明と再発防止のための内部調査チームを設置した。同厩舎にいる他の競走馬１４頭の検査も予定し、禁止薬物の陰性を確認するまで、公正保持のために出走禁止とした。同厩舎は市に対し、「（禁止薬物を）与えた覚えはない」と話しているという。
市ばんえい振興室は「馬の体に入った経路は不明。警察の調査を待ちたい」とした上で、「ファンの皆さまや関係者にご迷惑をおかけしたことを心よりおわびします。一日も早く原因究明と再発防止、競馬の公正確保に努めます」とのコメントを出した。
市によると、同馬が１６日の第７競争で失格となったことで、関係する賞金などは返還となるが、勝馬投票券（馬券）の変更はない。
ばんえい競馬で禁止薬物の陽性が確認されたのは２００７年１２月以来。この時は２頭からカフェインが検出され、調査では無許可の飼料添加物が与えられた疑いが濃厚とされたが、具体的な原因は特定できなかった。０２年には厩舎の飼料に茶葉がまかれてカフェインが検出されている。（小林祐己）
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「水差された」ファン、関係者落胆
２００７年１２月に、競走馬２頭からカフェインが検出されて以来の禁止薬物検出。ばんえい十勝調教師会（会員２９人）の田上忠夫会長は「以前の問題発生からの信頼回復に向け、会として厳しいチェックを励行しているので驚いている。原因が不明なので何とも言えないが、さらに緊張感を持って日々の調教に取り組みたい」と話す。
別の関係者は「せっかくばんえい競馬がいい流れに乗ってきたのに、水を差された気持ち」と、やりきれない表情。ＮＰＯとかち馬文化を支える会の旋丸（つむじまる）巴専務理事は「支える会としては、今後もばんえい競馬を応援していくことに変わりない」と語った。
市がこの問題を発表した２４日、帯広競馬場はイベント開催もあり、多くのファンらでにぎわった。場内には公正保持のため、岡田厩舎の所属馬３頭が第７、第８レースで競走除外となることを掲示。市ばんえい振興室によると、来場者からの問い合わせは２件あったという。
禁止薬物検出のニュースに、来場者は一様に顔を曇らせた。
レース観戦に訪れた市内の５０代主婦は「一生懸命走っている馬がかわいそう」と話し、札幌から来た５０代の男性は「フェアプレーをしていると思って楽しんでいる。それが前提でないとすると、がっかり」と不快感をあらわにした。
相次ぐ不祥事「改めてほしい」
ばんえい室長訓示
ばんえい競馬で１６日に出走した競走馬１頭から禁止薬物が検出された問題で、市ばんえい振興室は２５日午前、調教師全２９人に向けた臨時の訓示会を帯広競馬場内で開いた。
同室の佐藤徹也室長は２０１５年度の元男性騎手らによる馬券購入事件や、１６年度に元男性騎手が内規で禁じられた調整ルームに携帯電話を持ち込むといった不祥事に触れ、「信頼回復に向けた再発防止策に取り組んでいる最中に、こうした事案が起きてしまったことは残念」と説明。「われわれ主催者だけでなく、調教師をはじめ厩舎（きゅうしゃ）自らが改めるところは改めるように動いてほしい」と呼び掛けた。
訓示会に先立ち、同室の徳安貴弘副主幹ら担当者３人が帯広署で、今回の事案の詳細を説明した。
