2024年4月号

特集/ときめきのプリン&愛しのシュークリーム

あっぱれ!十勝のあん(1)「あんのおいしさ、大地にあり 学ぼう!十勝の小豆」

 「十勝産小豆、使っています―」。あんのおいしさを約束する合言葉のように、全国で耳にするフレーズです。身近すぎてその偉大さに気付いていない十勝の皆さん、まずは小豆についておさらいしましょう。

<教えてくれた人>
豆の国十勝協同組合
理事長 梶原雅仁さん(丸勝 代表取締役社長)
※組合は十勝の雑穀業者約20社で組織

十勝のおいしい小豆、たくさん食べてください


あっぱれ!1 全国の収穫量、6割以上が十勝
 和菓子づくりに不可欠な小豆はかつて、和菓子文化が根付く本州でも盛んに栽培されていた。しかし、輪作体系が必要な小豆は広大な土地が必要で、本州では次第に収益がより上がる作物に変わっていった。一方、流通が発達するにつれ、品質のよい十勝の小豆を全国に届けることが可能に。地元産に頼る必要がなくなった本州の和菓子屋をはじめ、日本各地で親しまれるようになった。

 現在は近畿・中国、東北地方などでも作付けされているが、例年全国の収穫量の9割以上が北海道産、6割以上が十勝産だ。十勝の小豆が日本の「あん」を支えている。

昔は全国の町ごとに「あんこ屋」があり、地元の小豆を使った生あんが流通していました


全国に占める北海道の小豆収穫量の割合
※農林水産省北海道農政事務所「北海道における令和元年産 大豆、小豆及びいんげん(乾燥子実)の収穫量について」より
※十勝の2020(令和2)年産分(2021年12月末頃確定)の収穫量と比較できないため、2019(令和元)年分で引用


小豆の作付け面積と収穫量
※十勝総合振興局「2020 十勝の農業」から ※2005(平成17)年以前の数値は農林水産省「作物統計」、2010(平成22)年以降は農林水産省「特定作物統計調査」から。ただし2015(平成27)年の十勝の数値は農政部農産振興課「麦類・豆類・雑穀便覧」から、2016(平成28)~2019(令和元)年は十勝総合振興局調べ

【小豆の種類】
<写真左>大納言 
大粒で煮崩れしにくい。甘納豆、鹿の子(かのこ)など粒の形を保った製品に使われる。
品種例:とよみ大納言、アカネダイナゴン

<写真中央>普通小豆
大納言以外の普通品種。あんや菓子の材料として使われる。
品種例:エリモショウズ、きたろまん

<写真右>白小豆 
黄白色をした小豆。生産量が少ない希少種。ようかんや鹿の子などに使用。
品種例:きたほたる




あっぱれ!2 品質のよさは、豊かな土壌と気候から
 色や香り、味が高く評価されている十勝の小豆。おいしさのヒミツはこの3つ。

(1)水はけがよい火山灰の土壌
豆類は、水はけや日当たりのよい場所を好む。

(2)秋の天候が安定。日中の寒暖差が大きい
台風や秋雨などが続く本州に比べ、爽やかな青天が続く十勝の秋。種子が成熟する「登熟(とうじゅく)」期間が長くなり、風味豊かな小豆が実る。
※小豆をはじめ、十勝の作物がおいしくなる秘訣(ひけつ)です

(3)輪作体系が整っている
小豆は連作障害を起こしやすい作物。数年間のサイクルで違う性質の作物を植える、長期の輪作が必須。広大な土地を誇る十勝は、小麦やてん菜、ジャガイモなどを栽培し、適正な輪作体系ができている。
※何より農家の皆さんの努力の賜物(たまもの)です!

【十勝の小豆栽培の流れ】
・5月 種まき
・7月中旬~ 開花下部から上に向かって順次、黄色い花が咲く。花が咲いた後、莢(さや)を付け始める
・9月下旬~10月中旬 収穫

夏の小豆畑

小豆の花




あっぱれ!3 開拓と共に。明治初期から栽培
 十勝で小豆の栽培が始まったのは、本州からの入植が進んだ明治初期。十勝開拓の祖・依田勉三(1853~1925年)が率いる晩成社が最初と言われている。トノサマバッタの大群による作物被害が続いた当時、丈夫な小豆は無事だったというエピソードも残る。現在は音更、芽室、帯広など十勝管内の広い地域で栽培されており、その礎を築いてくれた先人に感謝!

食べて守ろう、十勝の小豆
 菓子の材料として全国で重宝されている十勝の小豆だが、コロナ禍で土産や贈答品需要が減少し、あんの消費が減っている。道内産小豆の消費は例年なら95万俵(※)だが、昨年は65万俵。梶原さんは、「消費が続く限りは小豆の栽培はなくならない。ぜひおいしい小豆を食べてほしい。いつものようにお届けできる日が来るのを待ち望んでいます」と話してくれた。今年は小豆の出来も上々らしい。十勝の皆さん、本日のおやつはあん菓子で!
※1俵は60kg

取材協力・資料参照
豆の国十勝協同組合(帯広市西21条南1丁目4、Tel:0155・37・2777)、十勝総合振興局、農林水産省HP

※フリーマガジン「Chai」2021年11月号より。
※撮影(小豆の種類の写真)/鎌田廉平。写真の無断転用は禁じます。

あっぱれ!十勝のあん

 十勝は小豆の一大産地。肥よくな大地で育まれた小豆から作るあんは、風味豊かで、十勝はもちろん、全国の和洋菓子店などで愛されています。さて、このあんが今、コロナ禍で需要が減っています。お膝元の十勝からその魅力を見つめ直し、おいしいあんをもっと楽しみませんか?あっぱれ、十勝のあん―。農家や菓子店の皆さん、そして十勝っ子が愛してやまない「あん」に贈る、応援企画です。
※掲載情報は2021年10月12日時点のものです。各店の営業状況は変更になる場合があります。事前にご確認ください。
※取材時のみ特別にマスクを外して撮影しています。

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