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牛ヨーネ病患畜の病型分類と胎子感染確率の検証

十勝家畜保健衛生所

1.試験のねらい
 牛ヨーネ病は、ヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)感染による家畜伝染病で、慢性下痢、削痩、泌乳停止などをおこし、死に至る疾病である。有効な治療方法はなく、患畜と診断された場合は殺処分対象となる。十勝管内では近年本病の発生が増加傾向にあり、平成29年の患畜は291頭であった。
 本病は経口感染のほか胎内感染が知られており、胎内感染は発症牛や高度排菌牛で感染確率が上昇するという報告があるが、ヨーネ菌の体内動態について、より正確に評価出来る病理学的検査と胎子感染の検証例はほとんど報告がない。そこで、今回、患畜の病理学的検査結果に基づく胎子感染確率の検証を行った。

2.試験の方法
①患畜の回腸病型分類
 患畜の回腸病変を正確に評価するため、病型分類方法として、宮澤ら(2013年)の発表した方法で無病変型(N型)、類結核型(T型)、混合型(T / L型)、らい腫型(L型)に分類した(表1)。なお、病変の強さ及び組織中のヨーネ菌量はN型<T型<T / L型<L型となる。
 材料は平成24年10月から平成28年7月までに本病患畜と診断した牛153頭の回腸と直腸便を用いた。回腸は病理学的検査を実施し、病型分類を行った。また、直腸便中ヨーネ菌DNA 量(以下、DNA 量)を測定し、統計学的解析のため多項回帰分析を用い、各病型とDNA 量を比較した。
②患畜胎子の感染確率の検証
 材料は平成28年7月から平成29年3月までに本病患畜と診断した妊娠牛22頭を用い、DNA 量測定及び回腸の病型分類を実施した。また胎子検体(肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、回腸、空腸、結腸、胎便)及び母牛検体(臍帯、子宮小丘)を用いてヨーネ菌の培養検査を実施した。統計学的処理として母体回腸の病型ごとに胎内感染が成立した頭数を計測し、胎子感染確率を算出した。さらにロジスティック回帰分析を用いて、胎子感染確率の有無とDNA量を比較した。なお、胎内感染成立は、胎子検体の培養検査でヨーネ菌が分離された場合を、感染成立と判定した。

3.成果の概要
①患畜の病型分類
 患畜153頭の回腸の病型は、N型42頭、T型41頭、T / L型43頭、L型27頭に分類された。各病型におけるDNA 量の中央値は、病変の程度が強くなるほど高値を示した(図1)。多項回帰分析を用いてDNA 量に基づく各病型の分類確率を導出した結果、DNA 量が多いほど病変の強い型に分類される確率が高いと推測された。
②患畜胎子の感染確率の検証の検証結果
 患畜22頭の回腸の病型は、N型7頭、T型8頭、T / L型2頭、L型5頭に分類された。また、胎子検体ヨーネ菌分離陽性率は、N型0%、T型25%、T / L型50%、L型60%となり、患畜の病型が強くなるほど陽性率は高くなった(図2)。また、ロジスティック回帰モデルにより直腸便中DNA量に基づく胎子感染確率を算出した結果、母体の直腸便中DNA量が多いほど胎子感染確率が有意に高い(P=0.045)と推定された(図3)。また、胎子臓器の中で肝臓から高率にヨーネ菌分離されており、胎内感染は母牛の血液中にヨーネ菌が移行し、臍帯を通じて血行性に感染したと考えられた。

4.留意点
 本検証結果より、ヨーネ病の垂直感染はL型の患畜の胎子で発生確率が高いことが確認された。このことから、L型病型を呈する患畜の直近の産子の優先的とう汰あるいは頻回検査を行うことは、本病の早期清浄化に有効であり、対策の一助となると考えられた。



詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
十勝家畜保健衛生所 予防課 谷口有紀子
電話(0155)59-2021 FAX(0155)59-2571
E-mail:taniguchi.yukiko@pref.hokkaido.lg.jp

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