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焦げにくさには訳がある!~たまねぎ「ゆめせんか」の加工特性と安定栽培法~

北見農業試験場 研究部 地域技術グループ
十勝農業試験場 研究部 地域技術グループ
天使大学


1.背景と目的
 年間約30万tのたまねぎが主に加工・業務用として輸入されており、道産品による輸入代替が求められている。たまねぎ「ゆめせんか」(平成24年北海道優良品種)は乾物率とBrixが高く、加工原料として用いた場合に、既存の青果用品種と異なり、歯ごたえのある食感や焦げ色がつきにくい特長を有している。
 たまねぎ「ゆめせんか」の普及拡大のため、これらの特長の機作を解明し、実規模での加工適性を検証するとともに、地域によって低収傾向となる短所を補う安定栽培法の確立や長期貯蔵性の確認により、需要の喚起と供給の安定性をはかる。

2.試験内容
1)「ゆめせんか」の加工特性解明
   「ゆめせんか」の加工特性を物理性と成分特性から解明し、加工上の優位性の機作を示す。
2)既存加工ラインにおける加工適性評価
  国内大手実需者において、実規模の試作加工を行い、「ゆめせんか」の加工適性等を整理する。
3)栽植密度等による収量性と内部品質変動の検討および現地実証
   栽植密度等を検討し、収量変動と内部品質との関係を確認し、現地実証する。また、最新の窒素分施技術適用の可能性について確認する。
4)長期貯蔵による球品質への影響
  加工原料としての供給可能期間を明らかにするため「ゆめせんか」の貯蔵性を解明する。

3.成果の概要
1 )「ゆめせんか」は「北もみじ2000」と比べて、可食部の細胞形状の維持に関わるフルクタン含量が約2倍と多く、りん葉の破断応力や破断エネルギーの大きさ、煮沸後の細胞形状の歪みを抑制することに関与し、「ゆめせんか」の歯ごたえにつながると考えられる(データ略)。
2 )「ゆめせんか」はメイラード反応に関わる遊離アミノ酸(特にグルタミン)やフルクトース(糖)が少ないため、加熱時の焦げ色がつきにくいと考えられる(図1)。
  【メイラード反応】アミノ酸や糖分等の共存加熱下で褐色物質を生成する反応です。
3 )「ゆめせんか」の一次加工歩留まりは既存原料と同等であった。これを原料としたオニオンスープは、既存原料によるものと比べて甘みが強く、味に濃厚感があり、総合評価は有意に高かった(図2)。
4 )遅植え(5月5、6半旬)で減収したことに加え、早植え(4月~5月1半旬)での抽台のリスクを考慮すると、「ゆめせんか」の移植適期は5月2、3半旬である(表1)。
5 )「ゆめせんか」は「北もみじ2000」と同様、密植ほど一球重は小さくなるが、標植区(株間10.5cm)で加工用収量は高くなる(表1)。また、窒素分施区(N=10+5)では全量基肥区(N=15)より約5%増収し、「北もみじ2000」と同様に窒素分施技術が有効であった(表1)。
6 )「ゆめせんか」の乾物率およびBrixは、いずれの栽培方法でも「北もみじ2000」より高く、栽培法で加工適性が損なわれることはないと考えられる(表1、一部データ略)。
7 )球内部の萌芽程度からみた「ゆめせんか」の供給可能期間は、外気導入式貯蔵庫で概ね翌年4月上旬まで、3℃・湿度80~90%RH設定貯蔵庫(ながいも用貯蔵庫)で概ね5月上旬までと考えられる(データ略)。
8 )4月以降の貯蔵中の重量歩留まり低下は「北もみじ2000」より顕著であったが、乾物率およびBrixは高く推移し、上記の供給可能期間中に加工適性が損なわれることはないと考えられる(図3、一部データ略)。

4.成果の活用面と留意点
 「ゆめせんか」の加工向け栽培および加工利用上の参考となる。






詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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