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焦点・町長選のまちから(上)大樹

放球に向けて準備が進む大気球(大樹町多目的航空公園)。“宇宙のまちづくり”を町民はどう判断するのか

 統一地方選の第2ラウンド・町村長選は19日の告示(24日投開票)が間近に迫った。改選を迎える管内7町村のうち、選挙戦が確実視される大樹、陸別両町の争点などを、まちづくりの課題も交えて探る。(統一地方選取材班)

宇宙政策 推進か軌道修正か
 「スペースポート(宇宙港)の建設場所として、大樹-釧路間の海岸線は世界で最も優れた場所。実績のあるこの町で、あらゆる航空・宇宙機の飛行試験を行いたい」。昨年12月、大樹町内で開かれた航空宇宙のシンポジウム(町など主催)。NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC、札幌)の伊藤献一理事長は、同センターが提唱する「北海道スペースポート計画」について熱っぽく語り掛けた。

 1990年代以降、航空宇宙のさまざまな基礎実験の舞台となってきた大樹町。今では上空を大気球や航空機、飛行船、小型ロケットなどが飛び、「宇宙のまち」にふさわしい光景が見られる。

地域経済へ波及大
 こうした航空宇宙への取り組みを推進するのか、軌道修正するのか-。現職・伏見悦夫氏(70)=3期=と新人・水谷隆司氏(64)=町議=の一騎打ちが濃厚となっている今回町長選で、両氏はそれぞれのマニフェスト(政策綱領)で異なるスタンスを打ち出した。町立病院改築や地場産品の開発支援、子供の医療費助成など似通った政策が並ぶ中、「宇宙」が明確な争点として浮上している。

 町職員(開発振興課長)時代から、自らこの推進に関わってきた伏見氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による大気球実験の町内への移転(2008年度)などこれまでの実績を挙げ、「地域経済への波及効果もあり、大きな夢へ向かって進みたい」と訴える。

費用対効果で疑問
 これに対し、水谷氏は「町がこれまで投じた経費を考えれば、見合うものになっていない。身の丈に合った政策を行うべきだ」と主張。「現在行われている実験の継続には異論はない」と現状維持の姿勢を取りつつ、関連行事に費やす労力や時間を他の分野に生かすとの考え方だ。

 実際、航空宇宙に対する見方には町内でも微妙に“温度差”がある。町の推計によると、航空運賃などを含めた町内外の経済効果は10年度で約3億2000万円(年間の町の関連予算は約500万円)。「町内だけでも宿泊や飲食、タクシーなどを中心に一定の効果が出ている」(商工会)と評価がある一方、町民からは「どのような実験が行われているのか分からず、宇宙のまちをあまり実感できない」(50代女性)との声も聞かれる。

 1985年、町が航空宇宙基地の誘致活動に乗り出して26年がたった。北海道スペースポート計画という壮大な構想も持ち上がる中、町民はまちの未来をどう描くのか。判断が注目される。(3面に立候補予定者インタビュー)

<北海道スペースポート計画>
 大樹町多目的航空公園を拡張、現在の滑走路(1000メートル)を4000メートルに延ばし、航空・宇宙機の開発拠点とする構想。将来的には、宇宙往還機の離着陸も想定されている。

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